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2022年6月23日

【2022年】観光・宿泊とそれに伴う小売・飲食の今後は?10のトピックス

2022年の各種業界はどうなる?

新型コロナウイルスによる経済的ダメージは計り知れません。
人の移動が制限された中で、特に観光業界や飲食業、小売店の痛みは甚大でした。

ただ、2022年の春には移動の制限も撤廃され、まさに「withコロナ」の様相を呈しています。
今後のビジネスのヒントはどこにあるのでしょう。

今回は、2022年6月10日に閣議決定された「令和4年版観光白書(「令和3年度観光の状況」及び「令和4年度観光施策」<観光白書>について)」から、国の指し示す「今後の観光業やそれにまつわる業種で起こること」を見ていきましょう。

今からでも取り組めることが見つかるかもしれません。
「これからどうすれば…」と悩んでいる方は、ぜひ読んでみてください。

2020年・2021年(コロナ禍)の流行のおさらい

「令和4年版観光白書」の読み解きの前に、コロナ禍の中で起きたブーム(トレンド)をおさらいしておきましょう。
あなたの身の回りでも、次のようなことが起きたのではないでしょうか。
今や、これらは定着し、今後もある程度継続する可能性を含んでいます。

トレンド1・マイクロツーリズム

密を避け、長距離の公共交通機関を使わず、近場で観光を楽しむ「マイクロツーリズム」が人気でした。
この動きは「県民割」によりさらに促進されました。
また、その後県民割はブロック単位で使えるようになり、自家用車やレンタカーでお隣の県に出かける、といった旅行の需要を生み出したのは記憶に新しいところでしょう。
特に移動時間・移動距離を短くしたい高齢者や、子どものいる世帯には人気が高かったようです。

トレンド2・ワーケーション

リモートワークのできる体制を持つ企業の中では、「ワーケーション」も人気でした。
有給休暇取得を前提とした「福利厚生型ワーケーション(移動費・宿泊費は個人負担)」を導入する企業もあり、社員は郊外の宿のリラックスした環境にいながら短時間のWeb会議に参加するなど、満足度も高かったようです。

トレンド3・グランピング

密を避ける楽しみ方のひとつとして、アウトドア人気も高まりました。
とはいえ、アウトドア初心者にとって「テントを張ったり、火をおこしたりは難しい」「重たい荷物を持って出かけるのも大変」という問題がありますが、これを解消したのが「グランピング」でした。
既に宿泊のためのテント(もしくはテントのようなもの)が準備されているうえ、バーベキューセットなどの食事も用意されていて、体一つで行けばアウトドア気分を楽しめる新しい体験を提供しました。

トレンド4・お取り寄せ(テイクアウト)

「緊急事態宣言」や「まん延防止等重点措置」により、旅行や飲食店の利用が制限された人たちは「あのお店の味を楽しみたい」と思ってもその願いはかなわず、お取り寄せやテイクアウトへとシフトせざるを得ませんでした。
お店の側もそれに応えるため、そもそもあったお取り寄せ用商品のブラッシュアップや、チルド商品・テイクアウトメニューの開発に努めました。
テイクアウトに至っては、ネットでオーダーした食品を運ぶ「フードデリバリーサービス」もしくは「クイックコマース」(Uber Eats/出前館/ぐるなびデリバリーなど)が多く立ち上がりました。

2022年、観光とそれを取り巻く市場に対する国の構想・10のトピック

では、いよいよ「withコロナ」の様相を呈してきた2022年以降、人が動くことで成立する「観光業」「飲食業」「小売業」に向け、国はどのような指針や構想を提示しているのでしょうか。
それは、2022年6月10日に閣議決定された「令和4年版観光白書」に示されています。
観光立国実現を目指す日本政府として、今後どのようにV字回復を目指そうとしているのでしょうか。

その内容はあまりにも膨大ですので、観光白書の中から10のトピックスをピックアップしました。
きっと、あなたのビジネスのヒントとなるものがあるでしょう。
「令和3年度観光の状況」及び「令和4年度観光施策」(観光白書)について│観光庁
※ここでは主に「第IV部:令和4年度に講じようとする施策」を中心にご紹介しています。

1.人材育成・即戦力の確保

コロナ禍においての観光業や小売業、飲食業は、人を休ませたり、ときに解雇したりしながら何とか持ちこたえてきました。
そのため、現在「人手が不足している」というケースも見受けられます。
一方、実質的に2年の間移動を禁じられた状況にある人たちは、「感染症に気を付けながらも、望むところへ早く行きたい」という欲求を抱えています。
また、国も海外からの旅行者を受け入れると宣言しましたので、インバウンド(訪日外国人旅行)の数も今後増えます。
それに対応するため、観光業も観光客を相手にする飲食業者も、即戦力を求めなければなりません。
国は、いわゆる就職氷河期と呼ばれる世代の人たち、または短時間なら働けるという女性の採用に関するモデル事業を実施し、その知見を全国に展開する計画です。

2.ユニバーサルデザインの推進

マイクロツーリズムを経験し、近隣でゆっくり過ごすという楽しみ方を知った日本人観光客に加え、インバウンド観光客の中には、高齢の方、もしくは身体的ハンディキャップのある方もいらっしゃるでしょう。
今後の日本の高齢化をも含めて考えたとき、道路や施設はどんな人にも使いやすい「ユニバーサルデザイン」であるべきでしょう。
観光白書でも次のように表現されていますので、今からでも手を入れられるところは手を入れておいたり、スタッフの研修に取り組んでおくといいでしょう。

高齢者等が安心して旅行できる環境を整備するため、バリアフリー対応や情報発信に積極的に取り組む姿勢のある観光施設を対象とした「観光施設における心のバリアフリー認定制度」の認定件数の増加と、複数の認定施設を組み込んだモニターツアー等の実施による制度の周知促進を図るとともに、認定対象施設の拡充を検討するほか、面的な「ユニバーサルツーリズム先進地域」の認定を行うなど、ユニバーサルツーリズムを地域の売りにする手法の導入を検討し、ユニバーサルツーリズムの普及促進を図る。

「令和3年度観光の状況」及び「令和4年度観光施策」(観光白書)について│観光庁

3.多様な宗教や食習慣を有する人たちへの対応

日本国内だけでも、様々なアレルギーを持っている人たち、そして自分なりに体のことを考えた食べ物の嗜好を持つ人がいます。
それに加え、インバウンド観光客の場合、宗教からくる独特の食習慣を有するケースもあります。
このように、食に関する好み・習慣は幅広いものですので、きめ細やかな対応ができる体制を整えておくことはとても大切です。

4.道の駅などを利用した観光・防災拠点への展開

自家用車やバスで出かけた先で、一番わかりやすく立ち寄りやすい場所といえば道の駅です。
国は、この道の駅を観光や防災拠点に適した場所に整備したいと考えています。
観光に向けては、「農林漁業者との連携により6次産業化への取り組み」「Wi-Fiなど通信環境の整備」「多言語への対応」「キャッシュレス決済環境整備」「外国人観光案内所整備」などを支援します。
また、災害対応の面では、災害の状況・支援活動に関する情報提供を行えるようにします。

5.市中に免税店を増やし、インバウンド需要を獲得

国は、市中に関税・酒税・たばこ税・消費税を免税する保税売店を拡大し、空港のカウンターで受け取れる仕組みを充実させようとしています。
特に地方に消費税免税店を増やそうと、2022年度に税制改正をし、訪日外国人旅行者向け免税販売手続の簡素化を図ります。
伝統工芸品などへのインバウンド需要拡大の一環として、外国人旅行者に向け、YouTubeの「TEWAZA」(伝統工芸青山スクエアチャンネル)を活用し、情報多言語化を支援、積極的なプロモーションを図ります。

「手技TEWAZAシリーズ│伝統工芸青山スクエア」
https://www.youtube.com/c/aoyamasquare

6.MaaS(交通手段と他のIT技術の掛け合わせによる利便性向上)の推進

MaaS(マース)とは、交通手段とIT技術との掛け合わせにより、新たなサービスを創出するものです。
たとえば、目的地にたどり着くまで複数の交通手段を利用するときでも、ネットで検索や予約、決済までをまとめて行える、といったようなことです。

自治体単位で検索サイトを制作した例もあり、その中でもわかりやすく使いやすいのが「おでかけこもの(三重県菰野町)」で、日本版MaaSモデル事業に選定、運営されています。
乗り換えルート検索(コミュニティバス7系統含む)はもちろんのこと、のりあいタクシーの予約、タクシー配車依頼まで、ひとつのプラットフォーム上で操作できます。
また、検索結果のコミュニティバス情報には、混雑状況も表示されます。
※2022年6月23日現在、デジタルチケット(決済)は準備中です。

おでかけこもの
おでかけこもの

 

MaaSを取り巻くサービスや、組み合わせ方は多岐にわたりますので、ここではカオスマップ(※)をご紹介します。
※カオスマップ:業界内の企業(サービス)をカテゴリーごとに示し、関係性をも含めて視覚的に理解するためのもので、「業界地図」とも呼ばれる。

MaaSカオスマップ2021年度版

Maasカオスマップ2021年度版│ボールドライト株式会社

7.歴史的資源である古民家などを活用したまちづくり

これまでも、古民家などを活用したまちづくりは行われてきました。
ですが、国としては古民家だけでなく、「城泊」「寺泊」など、関係省庁の支援なくしては実現しない日本ながらの観光コンテンツづくりも目論んでいます。
そのために必要な、「人材育成」「重要伝統的建造物群保存地区等への専門家派遣」、「まちづくりに取り組む官民連携推進チームごとの事例をWebサイトで公開」「日本政府観光局Webサイトで海外向けの動画を配信」といったことも計画しています。

8.観光コンテンツの開拓・創出

日本人だけでなく、海外からの観光客に向けて、新たな視点の「地域が稼げる看板商品」を作り上げるため、地域ごとの特性(自然・歴史・分化・食・生業など)を十二分に活用したコンテンツの創出と、販路開拓に至るまでのサポートも計画されています。
それらのコンテンツを、国際競争力に富むものとするために欠かせない「多言語解説整備支援事業」や、「再来訪を促すためのデジタル技術を活用した観光コンテンツづくり」といったものも推進します。

9.河川空間とまち空間融合で、良好な空間づくり

水に恵まれた国、日本において、「河川」もまた観光コンテンツとなり得るものです。
特に傾斜(河床勾配)が緩やかで、広い河川敷を誇る川の場合、京都でいう「川床」のような使い方も魅力的なものです。
川とまちとを緩やかにつなげる例として、オープンカフェなどでの水辺空間のにぎわい創出サポートは、
・「河川敷地占用許可準則の特例(2011年3月通知。水管理・国土保全局長が指定した区域で民間事業者の申し出による占用許可を出すこととなった)」
・「かわまちづくり支援制度(2009年創設。その川を管轄する組織へ計画を申請、認定されることにより、ソフト面・ハード面の支援を受けられる)」
のふたつの仕組みにより実施する、と、令和4年度観光白書に記されています。

10.地域限定旅行業務取扱管理者制度の周知・増加促進

2018年に創設された「地域限定旅行業務取扱管理者」は、資格を取得し、資格者登録をした地域内で旅行商品の計画・販売ができるものです。
国は、資格制度を創設したものの、まだ広く知られていない・資格取得者数が少ない地域限定旅行業務取扱管理者を増やし、「地域を盛り上げる人材を確保すること」も希望しています。

この資格があれば、
・カフェなどの飲食店が、参加費が必要なピクニックやキャンプを開催
・旅館やホテルが、自らオプショナルツアーを企画・販売
といったこともできるようになります。

まとめ

コロナ禍において、影響を受けなかった業種はありません。
ただ、観光に関連する業種、人が外出しなければ成り立たない業種においては、その影響は甚大でした。

これらの業界・業種に対する支援や、観光立国を目指す日本国の方針は、「withコロナ社会」に突入したともいえる2022年に閣議決定された「観光白書」内の「令和4年度観光施策」に記されています。

観光業はとても裾野の広いものです。
まち(地域)・各種施設・サービスがまとまって「魅力的」に見えることで、これまで移動を制限されていた人たちがある程度の経済力を取り戻したとき、またインバウンド需要が戻ってきたとき、「選ばれる観光地」としてV字回復が見込めます。

既に取り組んでいることがあればその加速を、まだ着手していないものがあれば今から情報収集をし、自社で取り入れられそうなものがあれば取り組みを進めてください。

「令和4年版観光白書」には、他にも多くの取組・方針が掲載されていますので、関心があるときはどうぞご覧になってください。

「令和3年度観光の状況」及び「令和4年度観光施策」(観光白書)について│観光庁