「つながらない権利」―働き方改革の次に来る?生産性向上に取り組もう

あなたは今、「働き方改革」に取り組んでいる、または取り組もうと思っていませんか。

働きやすい環境を整えるために欠かせない視点のひとつに「つながらない権利」というものがあります。
欧米でも注目されはじめている「つながらない権利」とはどういうものでしょうか。
導入事例とともにみていきましょう。

「つながらない権利」とは

まず、「つながらない権利」についてご説明します。

「つながらない権利」とは、勤務時間外の業務連絡を拒む状態、または対応を拒否する権利を指すものです。

テレワーク(在宅勤務)が広がり、勤務形態も自由になりつつある今、勤務時間外のメールや電話が休暇を台無しにすることも考えられます。
仕事とプライベートが曖昧な状況は、ときに社員のこころやからだの健康を害することがあります。
近年広く聞かれるようになった「ウェルビーイング(幸福/健康)」の理念にも反するでしょう。

勤務時間外の連絡対応は、基本として残業手当の対象となります。
そのような対応が求められるのであれば、本来、いわゆる36協定の締結が必要です。

「つながらない権利」が侵害されたときに起こり得ること

勤務時間外に対応が必要な電話・メールが頻繁に届くとき、それは社員にどのような影響が及ぶのでしょうか。
ここでは、雇用側から見る影響をピックアップします。

残業代が発生する

勤務時間外、特に休暇中に「すぐに対応が必要な連絡」が常に入るような状態は、雇用者の指揮命令下にあるとみなされることがあります。
一般社員の労働時間は、1日で8時間、1週間では40時間の上限がありますので、それを超えて対応の必要な連絡が入れば、残業代支払いの対象となるでしょう。

もし労働条件が超過することが起きやすい社員がいるなら、個別に36協定を締結したうえで、きちんと勤務時間をカウントしましょう。

パワハラとみなされる

本来ならプライベートな時間に、多くの業務連絡が入ってくる・すぐ対応しなければならないといったことが続くと、パワハラ(パワーハラスメント)と受け取られる可能性があります。
「休みの日を邪魔される」「いつも仕事ができる態勢でいなければならない」となると、仕事とプライベートが曖昧です。
それが精神的な重圧となり、精神的疾患を引き起こしてしまうことも否定できません。
そうなると、安全配慮義務違反とされてしまいます。

通常業務の効率低下

こころやからだを休めなければならないプライベートタイムが邪魔されると、疲労回復のタイミングを逸してしまうこともあります。
人によっては「いつ連絡がくるのか」が気にかかり、変な焦りを感じる、眠りづらくなるといったことが起きてしまうでしょう。

充分に休めず、心身の健康を保てない状況が続くと、結果的に勤務時間内の業務に支障が現れることにもなりかねません。

「つながらない権利」は法制化されている?

2024年現在、「つながらない権利」は法制化されてはいません。
ですが、この「つながらない権利」は働き方改革の延長線上にある考え方ともいえます。

働き方改革が目指すもののひとつに、労働力の確保があります。
時間外の連絡を必要最低限とし、きちんと休める環境を整えることは、労働力の確保・維持につながるでしょう。

「つながらない権利」の導入事例

では、この「つながらない権利」はどのような方法で取り入れられているのでしょう。

日本経済新聞の記事から、その事例をみてみましょう。

休日に業務連絡NG 「つながらない権利」日本では?│日本経済新聞

ジョンソン・エンド・ジョンソン

同社は、2015年7月に社内に向けてある呼びかけをします。
平日の22時以降、また土日にメールを送信しないようにというのがその内容。
基本的な運用方法は、急ぎのメールでないものは下書き保存し、週明けに送信するなどです。

三菱ふそうトラック・バス

2014年12月より、休日にメールを受け取りたくない社員を対象に、休暇中に受信したメールを遮断するシステムを導入しました。
休暇中に届いたメールには、「休暇中ですので、それ以降に連絡してください」というメールが自動的に返信されるというものです。

「つながらない権利」を導入するときの着目点

「つながらない権利」という考え方を取り入れようとするとき、どのようなことから着手すればいいのでしょうか。

業務内容の可視化

事前準備として、(特殊でない)一般的な業務を可視化します。
誰が・いつ・どんな仕事をしているのか、それに伴ってどんな連絡手段を採用しているのかを理解しましょう。
業務内容を確認することで、特定のだれかに仕事が集まりすぎていないかどうかがわかります。
また、連絡手段・タイミングまで追求すれば、業務時間外に「対応が必要な連絡」がされていないかもわかってきます。

ルールを定める

極力シンプルな「基本ルール」を決め、運用してください。
あまりに細かすぎるものは定着しづらいからです。

・休み明けでもいいものは送信しない/返信しない
・就業時間外の電話やメール、チャットは避ける
・仕事のメールを個人の携帯電話へ転送しない

このようなルールなら、チャレンジしやすいのではないでしょうか。
運用しはじめて何かしらの引っかかりがあるのなら、必要に応じて見直し、ブラッシュアップしていきましょう。

企業のトップが宣言する

「つながらない権利」に関してルールを決めたら、トップが自ら社内に宣言するとよいでしょう。
定着しやすい空気が醸成されます。

宣言の際には、ルールが何のために作られたのか、その意義を説明してください。

・社員のこころとからだの健康を追求する
・業務の効率化を目指す
・ムリ・ムダを省く

社内でのルール定着度合いに併せ、必要に応じて追加の社内アナウンスを継続してください。

まとめ

働き方改革が進む今、その延長線上で「つながらない権利」という考え方も広がりつつあります。

法制化こそされていませんが、社員のプライベートな時間を守ることはとても大切。
心身の健康のためにも、休み明けの業務効率を保つためにも、業務時間外につながらないことは重要視されてしかるべきものです。

業務時間外の無理な連絡を回避することで、雇用者(会社)も社員もどちらにもよい循環が始まるとも考えられるでしょう。
一度、「つながらない権利」についても考えてみてはいかがでしょうか。

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