法人・個人を問わず、事業を展開するうえで欠かせない考え方のひとつに「ブランディング」があります。
ビジネス書や、そのような情報を取り扱うWebニュースでも「ブランディング」「ブランド化」という文字が多く出てきます。
・そもそも「ブランディング」とは何?
・ブランドの成功事例は?
・「ブランディング」のためには、どんな分析が必要?
このような疑問を持っておられるなら、ぜひこの記事を最後まで読んでください。
中小企業こそ、何らかの方法でブランディングに取り組まなければならないと思われるかもしれません。
ブランディングとは?
ブランディングとは、「ブランド化」するための各種の施策のことです。
ブランディングは、企業の規模の大小、商品の価格帯にかかわらず、とても重要な視点です。
というのも、ブランディングできているかどうかで、集客力(=売り上げ)に大きな差が出るからです。
ブランディングの成功事例は?高級品でないとブランディングできないの?
ブランディングの成功事例を見れば、高価格帯のものだけが「ブランド」ではないことがわかります。
様々なブランディング事例を見ていきましょう。
10円駄菓子「うまい棒」
2022年4月にこそ10円から12円(税別)に値上げされましたが、長い間「1本10円駄菓子」として広い世代に愛されたのが「うまい棒」です。
既に答えは出ていますが、
・10円で買えるお菓子=うまい棒
と認識されている、つまりブランディングできているのが「うまい棒」です。
価格だけでなく、風味の幅広さから多くの人の口に合う駄菓子としての地位を獲得しています。
うまい・やすい・はやい「吉野家の牛丼」
ベーシックな牛丼並盛なら税込みで426円と、500円でおつりがくる吉野家は、「うまい・やすい・はやい」がキャッチコピーです。
そのキャッチコピー通り、早く安くランチを済ませたいビジネスパーソンを中心に、ヘビーユーザーが多くいます。
ただ、このキャッチコピーが発表された当時は、「はやい・やすい・うまい」だったそうで、その時代時代に合わせた順序に組み換えながら、商品の特性をアピールし、広く認知されてきました。
なぜブランディングしなければならないの?
では、なぜブランディング活動が必要なのでしょうか。
上のふたつの事例から「ブランディングに取り組むべき理由」をご説明します。
1.すぐに思い出してもらえる=商機の拡大
「この後用事があるから早くランチを済ませておきたい」という希望があれば、「それならさっと牛丼で済ませよう、そうだ、吉野家があるな」と思い起こしてもらえます。
これは「うまい・やすい・はやい」と理解されていること、全国に何店舗もあることから、どこでも同じ体験ができると、吉野家ユーザーは深く知っているからです。
出張先の飲食で迷ったとき、多くのビジネスパーソンは多忙なスケジュールの隙間を縫い、広く知られるファストフードチェーンへ行き空腹を満たした経験を持っています。
その多くの経験も、「すぐに思い出してもらえた結果」です。
2.一定のシェアの確保=収益の安定性
ブランディング活動により広く認知され、一定のシェアを確保できれば、ベースとなる収益が安定します。
「子どもでも買えるうまい棒」は、そのままでも子どもたちに愛される立派なお菓子ですが、上位の「プレミアムうまい棒」が発売されると、味覚が鋭い大人にも広く受け入れられていきました。
この上位商品(プレミアム)が売れ行き好調なのも、ベーシックな「うまい棒」の人気があってこそ成り立つものです。
ブランディングにより収益が安定してくると、上位商品を開発して事業拡大することも可能です。
3.後発品を寄せ付けない地位=宣伝広告費の削減
広く知られ、一定のシェアを得ると、後から発売される類似品を寄せ付けない力を得ます。
そうなると、それまで必要だった宣伝広告費をある程度削ることができます。
というのも、既に「○○といえば○○」と広く周知された状態ですので、さらなるシェア拡大に神経をとがらせる必要がなくなるのです。
ただ、後をついてくる企業の類似品は、他の特徴を加えているでしょう。
そのような追随企業の努力に負けない工夫は必要です。
吉野家では、夏にはうなぎを、冬には牛すき鍋を提供し、「恒例の季節感」を演出しています。
また、定期的に味を見直したり、キャンペーンを打ったりし、「飽きられない工夫」を凝らしています。
ブランディングに必要な5つの考え方
では、実際にブランディング活動にとりかかろうとするとき、どんな考え方・ものの見方をすればよいのでしょう。
代表的なものとしては、次の5つです。
・自社の強みを最大限に発揮する
・同業他社の商品/サービスとの違いを明確にする
・自社と同業他社とのポジションをはっきりさせる
・同業他社とのポジションや提供する商品に大きな差がないときは、「引いてみる」
・思い切って、商品/サービスを「再定義してみる」
では、この5つの考え方であなたの商品/サービスを確認し、ブランディングに取り掛かる下準備を進めてください。
1.自社の強みを最大限に発揮する
商品/サービスをブランド化しようとするなら、自社の強みを最大限に発揮した「主力商品」を選びましょう。
「これから開発する」という段階のものをブランディングするのは、開発費に加え広告宣伝費がかかります。
さらに言えば、まだ「市場がどんな反応をするかわからない」ものにブランディングコストをかけることは危険です。
2.同業他社の商品/サービスとの違いを明確にする
もしも既に同業他社から「類似の商品/サービス」が提供されているなら、それらとあなたの商品/サービスとの違いをはっきりさせましょう。
違いを細かく観察すれば、「顧客がどういう点を気に入って購入しているのか」「どの点が同業他社に負けているのか」がわかってきます。
良い点をさらに良くできないか、マイナスの点をどう底上げするのかを検討しつつ、顧客にもわかりやすく「強み」を打ち出す方法を考えてみましょう。
3.自社と同業他社とのポジションをはっきりさせる
類似商品/サービスであっても、貴社と他社とのポジション(位置づけ)によって「どういう人たちにとってのブランドとなりうるか」が大きく違ってきます。
類似の商品/サービスを扱っている以上、購入する人は「何らかの理由」で他社のものと区別をしているはずです。
誰にとってのブランドなのかを確認するため、ポジションを明確化してください。
上で挙げた吉野家の場合、やはり「うまい・やすい・はやい」で、ビジネスパーソンに人気です。
一方、同業他社といえるすき家は、幅広いメニュー展開で「どんな人と一緒に行っても大丈夫」、スイーツメニューの拡充で「カフェ感覚でも使える」という点から、子どものいる親御さんや、ゆっくりと過ごしたい層にも人気です。
これがポジション(ポジショニング)です。
ポジションを確認するための「ポジショニングマップ」を用意しましたので、使ってみてください。
ダウンロードファイルは、飲食店向けの縦軸・横軸としていますが、必要に応じて要素を書き換えてポジショニングにチャレンジしてみてください。
どうすれば同業他社とすみ分けできるのか、どんな層に人気が出そうか、再確認してください。
4.同業他社とのポジションや提供する商品に大きな差がないときは、「引いてみる」
もし、同業他社との差別化が難しく、ポジションもダブってしまいそうなら、思い切って商品/サービスの一部を「引く」ことも検討してみてください。
それで、新しいものが生まれることもあります。
たとえば、通称「1,000円カット」と呼ばれるQBハウスやサンキューカットですが、美容・理容店で他に見かけるパーマやシャンプーなどはなく、ヘアカットに特化して成長を遂げました。
特にこだわりはない、高頻度で通い常にさっぱりしていたい、といった層に人気です。
このように、貴社の製品の一番大事な点だけに絞り込みした新しい商品ができれば、それがまた新しい層の顧客に認識されることもあり得ます。
5.思い切って、商品/サービスを「再定義してみる」
既存の商品/サービスを見直し、それらを再定義するのも一つの考え方です。
たとえばあなたが、バッグの製造メーカーだったとします。
これまで単なる3WAYバッグとして売り出していたものが、意外にも赤ちゃんのいるママさん達に人気と気づいたら、あなたはどうしますか。
ママさんたちの使い方を詳しく聞いて、現モデルに工夫を凝らし、「マザーズバッグ」として売り出す方法を検討しないでしょうか。
これを商品の「再定義」と呼びます。
これまで特にターゲットを絞っていなかった商品が、世の中の「子育て中」の人たちの役に立つものに変化するのです。
これによって、ターゲットもがらりと変わり、商品の価値(≒価格)を上げられるかもしれません。
現在のラインナップがどんな人たちに人気なのか、工夫して価値を付加できないか、見直してみてください。
※その他、ブランディングに関連する情報として、「コンテンツマーケティングとは?その手法4つの内容は?」も参考にしてください。
まとめ
今回は、ブランディングの意味と、なぜブランディングが必要なのかを解説しました。
また、ブランディング活動に必要な5つの考え方もお伝えしました。
ブランディングは、「○○といえば○○」と認識してもらうため、ビジネスにおいてとても大事なものです。
類似する商品群の中でも認知度が高ければ高いほど、手に取ってもらいやすく、繰り返し購入してもらえます。
低価格帯のものほど、ブランディングが重要といえるのかもしれません。
ブランディングに関心がある方は、今回の記事を参考にしながら、特に「自社の強みの確認」「他社との位置関係(ポジショニング)の確認」「自社製品の再定義」にチャレンジしてみてください。
そうすることで、ブランディング活動の一歩目を踏み出せます。